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トーマス・マン 神話とイロニー
- 洲崎惠三
- 01年度学術振興会助成
- A5
- 398
- 8,800円 (本体8,000円 )
- 2002年2月25日
- ISBN978-4-87440-681-6/ISBN4-87440-681-5
- C3098
- 文学・語学/欧米〈文学〉
- 内外の研究成果をふまえ、アドルノの同一性=非同一性の相互限定否定弁証法とマンのイロニーの関連づけ、ハイデガーの根拠律によるヨセフ神話考察などで、新たなマン像を提示。
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- 凡例
序 論 神話とイロニー
第一節 テーマ――神話とイロニー、ミュトスとロゴス
1 ミュトスとロゴス/2 シンボルと神話/3 モデルとしての神話、神話と心理学/4 イロニー
第二節 構成、各章概要
1 構成/2 各章概要
第三節 日本におけるトーマス・マン受容――自然とフマニスムス
1 闘うフマニスト/2 三島由紀夫、辻邦生、北杜夫のトーマス・マン受容/3 深層心理学と神話/4 自然/5 自然とフマニスムス
第四節 現代ドイツ文学とトーマス・マン――ドイツ二〇世紀前半小説の諸相
1 価値真空時代の叙事詩/2 ドイツ二〇世前半の小説の六特性/3 モデルネの神話
第1部 神話(ミュトスMythos)
第一章 nunc stans(静止セル現在)と神話
第一節 サント=ヴィクトアール山、ペーター・ハントケのnunc stans
第二節 『魔の山』の時間と無時間
第三節 ショーペンハウアーのnunc stans
第四節 祖型、祝祭、心理学としての神話
第五節 『パリ始末記』のアルフレート・ボイムラー批判
第六節 黄昏から曙光へ
第七節 自然科学となったロマン主義(ジークムント・フロイト)
第八節 希望の原理としての神話(エルンスト・ブロッホ)
第九節 大地(闇)の母から太陽(光)の父へ(J・J・バハオーフェン)
第一〇節 始源母胎への意識の光
第二章 『魔の山』(意志と表象としての世界)――ロマン主義か啓蒙主義か――
第一節 冥府〈魔の山〉への昇降、水平と垂直
第二節 意志と表象としての世界、永劫回帰と時計時間
第三節 意志、無形式、ロマン主義の勝利(B・クレスディアーンセン)
第四節 表象、形式、啓蒙へのイニシエーション(H・コープマン)
第五節 魔の山にかかる想像力の虹(イロニー)
第三章 八つ裂き、エロス襲撃、ヘルメース――『ヨセフ』四部作三つのモチーフと根拠律――
序
第一節 八つ裂きのモチーフ(死と再生)
1 ディオニューソス=ザグレウス(ニーチェ)、象徴としての神話(E・カシラー)/2 イーシスとオシーリス/3 バビロニアとエジプト、超越と内在、アポカリプスと輪廻
第二節 エロス襲撃モチーフ、ムト=エム=エネトとヨセフ
1 白い月の尼とエロスの鵞鳥/2 母権性と父権性(バハオーフェン)、自然と精神、エジプトとヘブライ/3 汚泥の白鳥/4 エロスの火と精神の氷
第三節 ヘルメース=モチーフ、月
1 八つ裂きのタムズ=アドーニス(Tammuz=Adonis)からヘルメースとしてのヨセフ像へ/2 ヘルメースと月/3 神々の子供(ケレーニイ、ユング)、男女両性具有者ヘルマプロディートス/4 祖型としての神話
第四節 根拠としての自然とロゴス/1 根拠律、根拠は深淵、矛盾律/2 ratio、ロゴス、principium/3 存在は遊戯、人間存在の啓示としての神話、神話との同一化(unio mystica)
第五節 「初めにロゴスありき」
1 神の息吹き=言葉(ロゴス)/2 物語の精神
第四章 メフィストーフェレスとしてのアドルノ――現代のファウストゥス博士――
第一節 実現されたユートピア
第二節 自然・非同一的なるもの
第三節 銀蠅糞塊と麝香の匂い、死と人間性(『欺かれた女』)
第四節 『カルメン幻想曲』(Fantasia sopra Carmen)
第五節 共作の感情移入
第六節 亀裂――フィエスコのムーア人、ハサン
第七節 絶えず否定する精神
第八節 同一性への抵抗としての個、自己否定による自己実現
第九節 聖画像破壊(Ikonoklasmus)と再構築、ペーネロペーの織物
第一〇節 イロニー――非同一の同一化、同一の非同一化
第2部 イロニー(Ironie)
第五章 正負の自己意識(アイデンティティー)とイロニー――マルティーン・ヴァルザーの論をめぐって――
第一節 イロニーとは何か
第二節 自己意識とイロニー、正負のアイデンティティー
第三節 マルティーン・ヴァルザー文学の四基音――欠如
第四節 古典的イロニー(偽装)――ソクラテス
第五節 ロマン主義的イロニー(自己同化)――F・シュレーゲルとフィヒテ
1 ソクラテス的イロニーの市民的イロニーへの機能替え(F・シュレーゲル)/2 自我と非我、有限と無限間に浮遊する想像力(フィヒテ)/3 意識の累乗、超越論的ポエジー
第六節 イロニーの弁証法――ペーター・ソンディ、ヘーゲル
第七節 正負の自己意識とイロニー
1 対立両極間に浮遊する精神的自由、正の自己意識(F・シュレーゲル、トーマス・マン)/2 負の自己意識(カフカ、ローベルト・ヴァルザー)/3 否定弁証法/4 内面の逆説的表現、匿名としてのイロニー(キルケゴール)
第八節 マルティーン・ヴァルザーのトーマス・マン批判
第六章 イロニーと言語再生、モンタージュ、表現主義論争、仮象と現実
序 連続と非連続の転回点
第一節 日本のトーマス・マン受容三態
第二節 イロニー三態(中間性、批評距離、遊戯性)
第三節 イロニーの表現構造・落差(差異)信号
第四節 ニヒリズム
第五節 風景からレンズへ、所記から能記へ、芸術の自律化
第六節 反文法的言語再生(ハイセンビュテル)
第七節 象徴から再生へ、主観の内面告白から外的略語的人間把握へ
第八節 表現主義論争、小説の理論、全体性とイロニー(ルカーチ)
第九節 表現主義、リアリズム、単語の独立、モンタージュ(エルンスト・ブロッホ)
第一〇節 引用、伝統と革新
第十一節 強制された宥和、芸術的仮象と経験的現実の差異(アドルノ)
第七章 イロニーの相におけるトーマス・マンのニーチェ受容――『ある非政治的人間の考察』――
第一節 ヴァーグナー、ドイツ性批評家としてのニーチェ
第二節 心理学者としてのニーチェ
第三節 自己磔刑の悲劇的倫理家としてのニーチェ
第四節 〈生〉の概念定立者としてのニーチェ
第五節 イロニーと市民化
第六節 非政治的人間と芸術的フマニスムス
第七節 ドイツ性、ロマン主義、音楽(ヴァーグナー)への惑溺とその克服
第八章 パレストリーナ、性と知の悪魔――イタリアへのマンのアムビヴァレンツ――
第一節 火と氷地獄
第二節 Homophilie(火)
第三節 エロスの襲撃
第四節 仮面と素面、舞台と楽屋、小説と日記
第五節 プレネステの悪魔(ケレーニイ)
第六節 ダンテのインフェルノ、氷地獄
第七節 知の悪魔・イロニー
第八節 ドン・ファン、ファウスト
第九節 フィオレンツァ、美とアスケーゼ(禁欲)
第一〇節 アムビヴァレンツのイロニー
結 論 ミュトスとイロニーの織物――トーマス・マンの文学――
第一節 神話(ミュトス)
1 ウェヌス・アナディオメネ/2 アプロディーテー=ウェヌス/3 マーヤのヴェール、物語の織物/4 デーメーテール=ペルセポネー/5 ディオニューソス、イェーズス・クリストゥス
第二節 神話、モデル、シンボル、ロゴス、心理学、イロニー
1 神話と祖型、自我の遠心と求心/2 新しき神話(F・シュレーゲル)、古代とモデルネ、神話と心理学/3 八つ裂きの神の再生への希望、永遠と瞬間(ハーバマース)/4 神話と象徴(W・エムリヒ)、心理学と神話(ヴァーグナー)/5 形象と意味――象徴、古典、ロマン芸術三形式(ヘーゲル美学)
第三節 神話と啓蒙
1 ファウストゥス博士、自然と理性/2 啓蒙の弁証法(アドルノ、ホルクハイマー、ハーバマース)
第四節 偽装、自己同化、留保としてのイロニー(ウーヴェ・ヤプ)
第五節 対立原理の弁証法的宥和としてのイロニー
1 弁証法的宥和/2 同一性と非同一性、否定弁証法(アドルノ)、イロニー/3 自然、エロスの襲撃――同一性の非同一化、非同一性の同一化としてのイロニー
主要参考文献/あとがき/初出一覧/索引/ドイツ語レジュメ