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国語科教育における能力主義の成立過程 輿水実と近代化の精神、1931-1977 

著者
中村敦雄 
シリーズ
 
助成
 
判型
A5 
ページ
752 
定価
9,900円 (本体9,000円 )
発行日
2020年3月20日 
ISBN
ISBN978-4-86327-509-6 
Cコード
C3081 
ジャンル
国語・漢文教育〈国語教育史〉
 
内容
小学校国語科の読むことの授業を支える概念や理論は,戦前期から戦後期にかけて変化を遂げた。現在では能力重視のあり方が多くの教師に受け入れられている。本書はその成立過程について,基盤を成す関係諸科学との連関を踏まえて多角的な切り口から解明した。
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序章 課題の設定と研究方法
 1 本書において設定した課題
 2 本書で取り上げた主要概念の定義
  (1)能力主義
  (2)近代化の精神
  (3)セオリーとパラダイム
 3 研究方法
  (1)セオリーの解明
  (2)研究者のライフヒストリーへの接近
 4 先行研究の概要
  (1)能力主義に関する先行研究
    ①能力主義そのものに関する先行研究
    ②能力主義を実体として機能させている諸現象に関する先行研究
  (2)研究者や、その研究成果に関する先行研究
 5 本書の構成
 6 本書における用語・表記について

     第1部 「力」のみなもと─戦前期における模索

 1 新任教師の驚き
 2 戦前・戦中期の言論状況
 3 国語科教育学の状況

第1章 『国語の力』における二つの「力」
 1 「なぞ」
 2 問題の所在
 3 『国語の力』の意義
 4 『国語の力』に込められた二つの力
 5 活動(エネルゲイア)としての言語
 6 『国語教育学』の誕生
 7 「動力としての国語」観との出会い
 8 ミト・アルバイターとしての輿水実の貢献
 9 『言葉は伸びる』の革新
 10 『言葉は伸びる』における「力」
 11 言葉はどこまで「伸びる」のか
 12 戦後期における「国語の力」
 13 まとめ

第2章 語法の発見
 1 素読解釈併行主義による授業
 2 問題の所在
 3 読むことの学習指導における「文段法」
 4 解釈学の導入とその受容
 5 形象理論実践上の困難
 6 『小学国語読本解釈学演習第一学年用』の意義
 7 国語科教育に関する定期刊行物の充実
 8 語法指導への関心の高揚
 9 西原慶一による系統的語法指導の探究
 10 語法指導への関心の広がり
 11 輿水実による「大綱」の提案
 12 国民科国語の誕生
 13 国民科国語をめぐる論争
 14 形象理論における「形式」の機能不全
 15 国民科国語をめぐる論争の背後にあった知見
 16 国民科国語における「読解力」の登場
 17 まとめ

     第2部 分節化された「力」─戦後期における萌芽

 1 墨塗りという不条理
 2 占領期評価の諸相

第3章 経験主義へのサゼッションと伝統の切断
 1 敗戦の日
 2 問題の所在
 3 占領下における「サゼッション」
 4 占領初期の日本教育界の進展
  (1)墨塗り教科書の衝撃
  (2)アメリカ教育使節団来日
  (3)『新教育指針』の発行
 5 進歩主義教育からの影響
 6 進歩主義教育とデューイの教育理論との関係
  (1)日本におけるデューイの教育理論の受容
  (2)CIE 係官のデューイ理解
 7 社会科の誕生
 8 「学習の範囲」の表(経験表)
 9 いいこ読本の登場
  (1)孤軍奮闘の編修作業
  (2)単元への対応
  (3)入門期教科書の作り直し
 10 昭和22年版学習指導要領に向けた「石森案」
  (1)コース・オブ・スタディー編纂委員会の立ち上げ
  (2)バージニア・プランとの軋轢
  (3)幻の「石森案」の概要
    ①石井庄司の証言から
    ②垣内松三に関する証言・資料から
    ③有光次郎の日記から
  (4)「石森案」の棄却
 11 まとめ

第4章 Language Arts をめぐるせめぎあい
 1 ヘファナンのサゼッション
 2 問題の所在
 3 ヘファナンの対応
  (1)社会科に対するヘファナンの対応
  (2)国語科に対するヘファナンの対応
  (3)日本側専門家の対応
  (4)「経験を与えること」の重み
 4 「作業単元」をめぐる混乱
  (1)作業単元とは何か
  (2)「 われわれの意見は、 他人の意見によって、どんな影響をこうむるか」
  (3)作業単元導入の経緯
  (4)作業単元への危惧
  (5)作業単元と教科書
  (6)急進的な変革への声とCIE 係官の反応
  (7)学校現場の実態
 5 教員再教育指導者養成協議会
  (1)輿水による「作業単元」の説明
  (2)「国語科の三段飛」
 6 「生活カリキュラム」の諸相
  (1)「生活の国語学習化」
  (2)「生活」概念の限界
 7 輿水実の「三段飛」のゆくえ
 8 コア・カリキュラムをめぐる攻防
  (1)コア・カリキュラム希求の声
  (2)コア・カリキュラムへの反発
  (3)文部省との抗争
 9 学力低下の声と教師への不信感
 10 昭和26年版学習指導要領の成立
 11 単元学習をめぐる論戦
  (1)教育科学研究会の復活
  (2)『単元学習の理解のために』
  (3)輿水の述懐から
 12 「表面の空々しい明るさ」
 13 まとめ

第5章 技能・能力の分節と編制
 1 老教師の信念
 2 問題の所在
 3 合衆国における淵源の解明
  (1)教育心理学の研究成果
  (2)研究成果としての教科書
  (3)プロジェクト・メソッドからの影響
 4 カリキュラム研究の研究成果
  (1)『イングリッシュの経験カリキュラム』における達成
  (2)バージニア・プランの能力表における達成
  (3)『現代生活のためのカリキュラム開発』における達成
 5 昭和22年版学習指導要領と『小学校国語学習指導の手びき』における技能・能力
  (1)昭和22年版学習指導要領
  (2)文部省国語教育研究会(1949)『小学校国語学習指導の手びき』
 6 輿水実による「国語科学習構成単位」の提案
 7 合衆国における研究成果の受容
 8 明石附小プランにおける「能力表」の登場
 9 能力表に関する問題意識の深まり
 10 読むことの「系統」に関する諸提案
  (1) 東京高等師範学校附属小学校内初等教育研究会(1949)『学習目標分析表』
  (2) 東京学芸大学附小五校連合国語研究会(1950)『単元による国語学習の展開 一学年』
  (3)長野県教育委員会(1950)『長野県カリキュラム試案1950 国語編』
  (4)輿水実(1950b)『国語科概論』
  (5)昭和26 年版学習指導要領
 11 「目標」「能力」一本化を支えるフォーク・セオリーの誕生
 12 まとめ

第6章 紐帯としての機能文法
 1 時枝誠記の独創
 2 問題の所在
 3 国語科における文法の位置
 4 合衆国の母語教育における文法の位置づけの変遷
 5 昭和22年版学習指導要領における文法の位置
 6 機能文法の登場
 7 戦前・戦中期と、戦後期との紐帯としての機能文法
 8 機能文法に対する反応
 9 機能文法をめぐる議論
  (1)座談会「中学校での文法教育の考え方・教え方」
  (2)公開座談会「文法教育の諸問題」
 10 「文法ブーム」の発生
 11 旧国語学との訣別
 12 まとめ

     第3部 系統化された「力」─能力主義の生成発展

 1 読書発表についての教師の省察
 2 パラダイムとセオリーの相互作用

第7章 経験主義の衰勢と能力主義の登場
 1 問題の所在
 2 能力主義提唱者としての飛田隆
 3 時枝誠記「国語科学習指導要領試案」
 4 経験主義への懐疑
 5 経験主義との訣別
 6 能力主義の萌芽
 7 解釈学への回帰
 8 第7回全日本国語教育協議会における協議
 9 協議会後の対立と、対立の消滅
 10 時枝誠記における能力主義のゆくえ
 11 合衆国における思潮の変化
 12 まとめ

第8章 昭和31年度文部省全国学力調査とその波及効果
 1 全国第2位躍進の秘訣
 2 問題の所在
 3 昭和31年度調査の概要
 4 低正答率問題(小学校⑦)の出題内容とその検討
 5 低正答率問題(小学校⑧(中学校⑥))の出題内容とその検討
 6 読解に関する調査の意義とその社会的機能
 7 その後の調査における「読解」の正答率
 8 波及効果としての「説明文ブーム」の諸相
 9 波及効果としての「分析的方法」の諸相
 10 波及効果が発生した教育政策上の背景
 11 まとめ

第9章 コンポジションの導入とその最適化
 1 問題の所在
 2 レトリックとコンポジション
 3 先行研究検討上の留意点
 4 話し方教育論の出発
 5 国語科教育学の基盤としてのコンポジションの位置づけ
 6 段落指導への進展
 7 国語科教育理論としてのコンポジション
 8 森岡健二によるコンポジション翻案の功罪
 9 まとめ

第10章 再発見としての読解・スキル
 1 問題の所在
 2 読解(Reading Comprehension)への接近
 3 日本における読解の台頭
 4 目標観・能力観をめぐる輿水実の迷走
 5 『国語スキルのプログラム学習』
 6 情報化社会に対する国語科教育学の対応
 7 国語科教育学における「情報」の布置
 8 まとめ

第11章 学習指導要領の記述にあらわれた変遷の諸相
 1 問題の所在
 2 輿水実(1954)『国語学力』
 3 昭和33年版学習指導要領成立の背景
 4 系統への期待
 5 昭和33年版学習指導要領とその特徴
 6 「系統」における記述についての分析
  (1)文章ジャンルの変遷
  (2)読むことの方略・プロセスの変遷
 7 輿水実による「基本的指導過程」の提案
 8 昭和43年版学習指導要領とその特徴
 9 昭和52年版学習指導要領とその特徴
 10 「国語教育道一すじ」
  (1)価値目標の衰退
  (2)輿水実の逝去
 11 まとめ

終章 結論
 1 経験主義から遠く離れて
 2 本書で掲げた課題にとってのコンテクスト
 3 本書で掲げた課題に対する結論
  (1)第1部
  (2)第2部
  (3)第3部
  (4)能力主義の問題点
 4 本研究の限界

あとがき

文献

付録 読みかた/読むこと/理解における「技能/技術・能力」「目標」「事項」一覧表
索引
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